ふちどり

後ろ見ながら前に進む、僕の日記。

かたるかえる

 

また蛙の夢をみた。


前に夢に出た蛙と同一個体なのだろうか。明るい黄緑色をした小さな雨蛙だ。その蛙はかなりよく喋った。あまりの勢いと口調のおかしさに、夢の中の僕は驚いてしまって、言い終わるまで何も言えずただ聞いていた。蛙はだいたい次のようなことを述べていた。

「おいらは哲学という言葉を使って手前の行いを正しいことにしてしまおうとする輩がいけ好かねえ。哲学哲学ってそもそもあやつらは哲学という言葉の意味を理解した上で話をしているのかい?それから偉人の言葉やら格言やらをありがたがって探すのも暑苦しったらありゃしねえ。どうせ後ろめたいことを無駄じゃねえって言ってもらえるような救われるセリフ探してっだけだろ。なんなんだ。弱っちい奴らだぜ。お前さんはそういう奴になるんじゃねえぞ。」

僕はぎくりとした。なぜ見知らぬ蛙にこんな説教されているんだろうか。そもそも蛙がべらべら喋っていること自体あり得ない事態だが、そのことよりもどうしても口調が気になって仕方なかった。思わず、お前そういうキャラだったのかよ!とツッコミを入れてしまった。真面目に話をきけ、とこっぴどく怒られた。僕は至って真面目につっこんだのだ、と反論した。すると蛙はその黒くてよく動く両眼をこちらにぐるりと向けた。おそらく睨んでいたのだろう。しかしその様子は全く恐ろしくなく、むしろ微笑ましかった。なんだよ、かわいいなあという僕の思考を感じ取ったのか、あるいは顔に出てしまっていたのか、蛙はより一層機嫌が悪くなり、どこかへぴょんぴょん飛び跳ねていってしまった。

 

蛙が飛び跳ねたとき、深い穴に落ちてゆくような感じがした。夢から覚めると、僕は布団から落ちていた。寝返りを打ったらしかった。普段は寝た時のままの姿勢で目覚めるほど、寝ている間にほとんど動かない僕にしては珍しいことだ。たったこれだけの布団の厚さも、夢のなかではあんなに深くなるのか、と妙に感心しながら、仕事の支度をした。