ふちどり

後ろ見ながら前に進む、僕の日記。

ぷかぷか

 

僕のおじいちゃんは、いつも煙草をふかしていた。

とても幸せそうに、満足そうに、けむりをぷかぷか吐き出していた。

 

おじいちゃんに会うのは、夏休みやお正月など帰省したときだけだったけれど、帰るたび孫である僕のことをとても可愛がってくれた。

でも、中学生になったくらいの頃から、僕はおじいちゃんのことをなんとなく避け始めた。いわゆる反抗期というやつではなく、本当になんとなく避けていた。


おそらくきっかけは煙草なのだと思う。僕は昔から匂いに敏感なこどもだったので、煙草の匂いはあまり受け入れられるものではなかった。

おじいちゃんが煙草をふかしている部屋を通るときは、扉を開ける前に一度大きく息を吸って、その後鼻をつまんで、せーの!で扉を開けてだーーっと走り抜けていた。それくらい煙草の匂いが嫌いだった。

あまり頭の良くない僕は、煙草の匂いが嫌いだからその嫌いな匂いを出しているおじいちゃんも嫌い、という安直な思考回路で、おじいちゃんが嫌いだと錯覚してしまっていたのかもしれない。


その錯覚は、高校三年生の春、おじいちゃんがこの世からいなくなってしまうまで続いた。ばかな僕は、それまで錯覚だと気が付かなかった。本当にばかだと思った。もっと話しておけばよかったと思った。

僕はおじいちゃんのことを何も知らない。煙草が好きということ以外、何を思い、何を考え、何に悩み、どのように生きてきたのか、何も知らない。

 

それでも、煙草をぷかぷかふかす人を見ると、いつもおじいちゃんのことを思い出す。