ふちどり

後ろ見ながら前に進む、僕の日記。

匂いとその人

今日は雪が降っていてなかなか外に出る気になれず、夕方になってやっと外に出た。

 

雪道をざすざす歩いて、店に入ってしばらくして、手から玉ねぎの匂いがすることに気がつく。

こういう料理中についた匂いって、料理をしている最中は鼻が慣れてしまって気にならないけれど、しばらく時間が経ったり場所を変えたりすると急に匂ってくるから不思議だ。ちゃんと手洗ったのに。

 

僕は目も耳も舌もあまり良くないけれど、なぜか鼻だけ良くて、物事の判断を嗅覚に頼るところがある。

人の名前や顔を覚えるのが苦手なのもたぶん、人を匂いで覚えているからだと思う。

 

体臭、というと嫌な匂いのようだけれど、僕にとっては顔と同じぐらい、一人ひとりに異なった匂いというのがあって、それによって個人を識別する。

バターの匂いの人、紅茶の茶葉の匂いの人、牛乳を温めた匂いの人、などいろいろで、その人そのものより、その人の纏う空気が僕にとっては「その人」になる。

こういう少し変わった嗅覚ゆえか、ずっと昔から僕は、人間というのは人「間」と書かれるようにやはりその境い目はぼんやりしていて、ゆらゆら揺らぐものという意識があるような気がする。

 

おかげで僕はこんなに不確かで頼りない、ふわふわした人間になったのかもしれない、なんて思いながら手から漂う玉ねぎの匂いを嗅ぐ。